2021.07.07
SEO,マーケティング

SEO世界の車窓から

SEO世界の車窓から

検索エンジンが敷くレールを走る、行き先の見えない列車に乗り続けて15年が経とうとしております。個人的には何度か下車したつもりですが、気が付いたらまた乗車してインターネット検索という広い大地の上で旅をしています。実に不思議です…。

今回のエントリーは私がSEOに関わり始めて以降の手法やSEOを取り巻く環境についてですが、今まで経験したことや感じたことを中心に振り返りついでに、なんとなーく、そしてザックリ書いています。(読んだところで検索順位が上がることはありません!)

検索アルゴリズムやコアアルゴリズムアップデート、ランキングのロジックを細かく解説するつもりは毛頭ございません。まぁ解説しろって言われてもできないんですけどね。

~2007年 「バックリンクの数こそ正義」時代

とにかく外部サイトからのバックリンクさえ獲得していれば順位が上がった時代です。

キーワードの難易度(競合性)にもよりますが、PageRank の高いサイトからのリンクであれば数個貼れば1ページめに、リンク集のようなカスみたいなページからでも数を集めたら結果が出せる状況でした。このような外部リンクのみの施策で、難易度の高いビッグキーワードがそれで上がることも…。

とりあえずサイトのページ数を20~50くらいにして、内部構造(内部リンク、titleタグ、metaタグ、h1タグ、altタグなど)整えたらあとはドメインの違う外部サイトから上位表示させたいキーワードをアンカーテキストでリンクを貼る、という手法がこの頃の主流で、近年では考えられないほどアホみたいにすぐ結果が出ましたね。

この時代は、「質の良いコンテンツ」とか「充実したページの数」なんて割とどうでもよく、ただ外部からリンクさえ貼ってもらえたら検索順位の王者となることができました。(もちろん100%上がってたわけではないですが)しかも、メインとなるキーワードを上位表示できると、ロングテールキーワードでもほぼほぼ芋づる式で上位表示できるので、SEOの上位表示に成功したサイトからするとすごくいい時代でした。

ちなみに、上で「リンク集のようなカスみたいなページ」と書きましたが、当時はYomi-SearchやAlinkのような登録式リンク集のCGIが無料で配布され、いろんな無料サーバなどに設置されたりしていて、リンクの登録を代行するサービスなんかもありました。(ディスり気味に書いていますが登録式リンク集には大変お世話になりました)

参考:検索エンジン登録代行サービス!セオアップアップ.com
http://seoupup.com/

SEO業界のレガシー「Yomi-Search」 本来はディレクトリ型検索エンジンプログラムとして配布されていたが外部リンクを増やすためのリンクファームとして活用されていた

検索窓で “link:URL” と検索コマンド入力するとそのURLに対しての外部リンクが表示されてたので、競合の分析なんかもしやすかったですね。

そしてGoogleがなぜPageRankを重要視していたかはWikipediaのページの「発想」のセクションを見てもらえたらすぐわかってもらえるかと思います。

GoogleツールバーをブラウザにインストールしたらサイトのPageRankが確認できた
(引用:http://www.sharots.com/picasa/pagerank/index.html

2008~2010年 「バックリンクの質も大事」時代

2020年代の今は一般的に「検索エンジン=Google」という認識ですが、スマホも今ほど普及していないこの頃の日本での検索エンジンのシェアNo.1はYahoo!検索でした。(正しくはこれよりも前から)

シェア率は、Yahoo!が7割・Googleが2割強程度で、それぞれが独自の検索エンジンを持っており、ランキングアルゴリズムが異なるためちょっと違う対策をしたりしていました。といってもだいたいが外部リンク増やすだけだし、外部リンクのアンカーテキストも特に変わりなしですが。

Yahoo!Japanは元々アメリカ本社のYahoo.comが開発したYST(Yahoo Search Technology)というエンジンを使用していたのですが、2010年にYSTをやめ、Googleのエンジンを採用する決定をしました。これはSEO業界ではかなりのビッグトピックでした。

この頃もまだSEOの手法として外部リンクがかなり有効でした。同じジャンル・カテゴリのページからリンクしたり、リンクを貼るサイトやページのコンテンツを充実させたり、お金払ってYahoo!カテゴリに審査出してみたり、「リンク貼ってりゃ順位が上がる」という時代からは一歩進んだように思いますが、徐々に中古ドメイン市場は過熱していきました。上映の終わった映画、倒産した会社や閉店したお店のドメインは自然なリンクがたくさん集まっているのでPageRankも高く人気があり、クライアントに少しでもいい外部リンク提供したいSEO会社とアフィリエイターとの争奪戦でした。

SEO業界の懐かしきロゴたち
そんな時代もあったねと 話せる日がきたわ(Yahoo!カテゴリに登録してもらうためにかかる費用は登録料ではなく審査料だった)

そういやMicrosoftがMSNサーチ、Windows Liveサーチを経て、2009年にBingをリリースしましたがこれは特筆すべきことがないですね…。

2011~2015年 「バックリンクをより自然に、そしてコンテンツの質を高めよう」時代

この時期くらいからGoogleは品質の低いページ(コンテンツの少ないページやプログラムによる自動生成ページなど)を検索結果から排除し、品質の高い検索結果を提供することを追求するため、大きなアルゴリズムアップデートを実施していきます。

パンダアップデート

2011年2月に適用されたアルゴリズムアップデート。コンテンツの少ないページや広告(アフィリエイト)ばかりのページなどが検索結果から排除されていった。

ペンギンアップデート

2012年4月に適用されたアルゴリズムアップデート。ページ内のキーワード出現率の高いページ、アンカーテキストや被リンクの異常な構築など、コンテンツ以外でテクニカルのみでSEOを行うサイトが排除されていった。

ハミングバードアップデート

2013年8月に適用されたアルゴリズムアップデート。複雑な検索キーワードに対して、そのキーワードの背景と文脈を理解してより関連性が高く的確な検索結果を提示するためのアルゴリズム(ユーザーの意図、文脈に沿った、関連性の高い検索結果が表示、キーワードの背景や文脈を理解することができるようになった)が実装された。

コアアルゴリズムアップデートの詳しい歴史については以下ご参照ください。

参考:Googleコアアルゴリズムアップデートのこれまでの歴史まとめ【随時更新】
https://digitalidentity.co.jp/blog/seo/algorithm/corealgorithm-updates.html

要するにGogoleは、小手先のテクニックで検索順位を上げているようなサイトを断罪し、真面目にコンテンツを作り定期的にアップしているサイトを評価する、という方に舵を切ったわけです。

そして2013年にはGoogleはPageRankを更新しなくなり廃止する方向に動きます。これもSEO業界にとってはかなり大きな出来事でした。外部リンクに依存した手法の「終わりの始まり」ですね。

中古ドメインの価値が可視化されなくなってしまったのでこれまで過熱していた中古ドメイン売買も落ち着いてきました。それでもしばらくはPageRankの高かったドメインからのリンクは有効だったように思いますが。(そしてグッバイGoogleツールバー)

プレスリリースを配信してプレスリリースメディアから被リンクを獲得する手法もありましたが、「広告みたいなもんだからnofollowつけなさい」とアナウンスしています。

参考:「プレスリリースは広告と同じ、リンクにはnofollowを付けるべき」とGoogleのジョン・ミューラー氏
https://www.suzukikenichi.com/blog/links-in-press-releases-should-be-nofollowed/

2014~2015年には検索エンジンがコンテンツの内容を重要視するようになったため、「コンテンツマーケティング」なる言葉も生まれました。

また、人工的なバックリンクをより自然なリンクに見せるために、「●●● 東京」のようなアンカーテキストから「東京で●●●はこちら」みたいな形に変化していきました。

SEO 外部対策(アンカーテキスト)の変化
あんな時代もあったねと 笑って話せるわ(SEOに関わり始めたときに既に「インプラント」は超難関キーワードでした)

2016~2020年 「コンテンツマーケでロングテールキーワード拾っていこう」時代

バックリンクを獲得して上位表示する手法は終わりを迎え、オウンドメディアやコンテンツマーケティングが主流となります。SEO会社さんやマーケティング支援の会社さんは口を揃えて「メインサイトとは別にオウンドメディアを立ち上げて、戦略的にキーワードを選定しながらしっかりとした記事を日々更新していきましょう、それでロングテールキーワードで上位表示を狙いアクセスが増えるでしょう!」とセールストークしてきます。

専門家監修による正しい内容のコンテンツを定期的にアップしていくというのはサイト運営してSEOを考える上で極めて重要なことですが、目的が『上位表示のためにオウンドメディアを立ち上げる』という潮流になってしまったため、せっかくたくさんのコンテンツ(記事)のために時間とお金をかけたのに、結果が出ないオウンドメディアは次々停止(閉鎖)していくことになります。

それとは別に2016年には、SNS等の医療関係者界隈でちょくちょく話題になっていたDeNA運営の医療メディア「WELQ」やリッチメディア運営の「ヘルスケア大学」が不正確な内容を掲載していた問題が大きくなり、2017年にGoogleがこれについて対策をします。

参考:医療や健康に関連する検索結果の改善
https://webmaster-ja.googleblog.com/2017/12/for-more-reliable-health-search.html

この問題をきっかけに、Googleが以前から提唱していたYMYL(Your Money or Your Life の頭文字を取った略称)という概念が検索アルゴリズムに強く反映されるようになり、健康やお金のことなど人の生活や人生に大きく影響するカテゴリにおいて信憑性の欠ける情報が掲載されているサイトは検索結果の上位から姿を消すこととなりました。(「信憑性の欠ける情報」というものをGoogleがどう判断しているかは不明ですが)

参考:検索品質評価ガイドラインの翻訳版
https://www.dentsudigital.co.jp/topics/2018/0822-000082/
https://www.irep.co.jp/press/pdf/google_general_guidelines_all.pdf

参考:グーグルの世界では「コンテンツイズキング」ではなく「コンテンツイズプア」である
http://pepera.hatenablog.com/entry/2016/11/29/070017

2021年~ かつてのセオリーが通用しない時代

Google大先生は20年かけて膨大な数のWebサイトやありとあらゆるSEO手法を学習し、いまやなんでもお見通しです。見かけ倒しのコンテンツ、人工的に増やしたバックリンクが通用しなくなり、誠実にサイト運営やマーケティングに取り組む人たちが評価されるようになってきました。

いまやるべきSEOは、至ってシンプルです。

  1. 検索した人へのアンサーとなるコンテンツ
  2. 自然なバックリンクの獲得
  3. 正しいHTMLの記述(マークアップ)
  4. モバイル(スマホ)対応
  5. ページ表示速度や親切なUI(Googleの言葉を借りるなら『優れたユーザーエクスペリエンス』)

よくよく考えたら、昔から大切なことはあまり変わってないですね。(ランキング要素は200以上あると言われているのに5コっていう…)

構造化データやSSR(サーバーサイドレンダリング)も稀に話題にあがりますが、しないよりはしたほうがいいかもな、くらいだと思っています。(求人サイトは構造化データやったほうがいいかな)

また、E-A-T(Expertise[専門性]、Authoritativeness[権威性]、Trustworthiness[信頼性] )はランキング要因(シグナル)ではなく概念だとGoogleも説明していますし、神経すり減らしあーだこーだ言いながら原稿を何度も編集するくらいなら新しいページやコンテンツ追加したほうが建設的ですね。原稿を書き換えるのが無駄だとは言いませんが。

やるべきことやったらあとは運を天に任せるという感じでしょうか。なんならお持ちのGoogle Homeをご自宅やオフィスの神棚に祀り、毎朝祈り​を捧げるのもいいかもしれません。心や行いが清く正しいサイトに神様は微笑むでしょう。

まだまだマニアックな手法についてのネタはあるのですが、とりあえず以上が私の15年強に及ぶ読んだところで順位が上がることもないSEO旅日誌となります。かの小沢健二さんも「ぼくらの住むこの世界では旅に出る理由があり」と歌っていたし、これからも行き先の見えない列車に乗って喜びと悲しみをくり返しながら理由のある旅は続くものと思われます。


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著者:嶋崎

音楽家のアシスタント、SEO会社勤務、Web制作やマーケティングの自営業を経て、精密審美歯科センターに参画。
2005年からSEO、2012年からWeb制作やってます。

趣味は、いろんな医療法人の事業報告書を見ること。

ハンバーガーとコーヒーを愛するアラフォー男

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